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投稿日時:2017/8/4 19:41


ヘリテージ・コモディフィケーション、世界遺産の観光地化、についてその取り組みの概要(一般的な語句説明)と具体例、利点と課題・問題点を教えてください。
回答投稿日時:2017/8/4 20:33
日本語での「遺産の商品化」は、ユネスコが2002年に世界遺産の厳正保護一辺倒だった方針を改めたことに始まりますが、世界遺産の観光地化はそれ以前から当たり前に見られていた現象です。
そこでユネスコは世界遺産の管理体制の厳格化を求める意味で、推薦書や登録審査時に観光地化に伴う環境負荷のアセスメントとその対策を要求するようになり、それが不充分であれば世界遺産には登録させない、あるいは条件付き登録ということで、見返りに観光地化を容認するようになった経緯があります。既存登録地も6年毎に現況方谷義務があり、その際に観光地化状況は最重要点検項目になりました。日本では富士山の登録時に夏の二ヶ月程の間に数十万単位の登山客が押し寄せることへの懸念が問題視され、その対策を二年以内に提出せよとの条件付き登録となり、入山料徴収という小手先の逃げ技で回避しましたが、実際には登録効果で増加傾向に陥り、いずれ世界遺産委員会での再議題になるのは確実です。
そもそも遺産の商品化は、世界遺産が損壊した際に自力で修復費用を捻出できない途上国が、観光収益の中から保全費用を賄えるようにするための措置という意義があります。その背景には世界遺産条約批准国に納付義務がある世界遺産基金の支出が相次ぐ財政的危機の回避目的もありました。
ユネスコが奨励する観光としてヘリテージコモディフィケーションは、カルチュラルスタディのような学習観光で(日本であれば本来修学旅行がこれを担っていましたが最近は単なる観光旅行になっていますが)、特に海外の世界遺産に触れることで異文化を理解し、引いては差別や宗教対立を無くしたいという理想もあります。
しかしながら、日本をはじめ観光業が盛んな先進国ではヘリテージツーリズムの意味を履き違えしている事例も多く、受け入れる側の途上国も営利に走り保全費用に循環されない悪例も多いのが実状です。
現在日本では、成長戦略の一つとして観光立国が掲げられ、その呼び込みの材料として世界遺産を引き合いにしています。政治的思惑が絡んでいることは、国内候補決定には内閣による閣議了解を得なければならないよう制度が改正された点に見られ、「地域自然資産区域における自然環境の保全および持続可能な利用の推進に関する法」などが成立したことに現れています。
観光地化の弊害は観光公害に尽きます。文化遺産でも訪問者数の増加は遺産への負担が大きいですが、自然遺産で万が一にも自然環境が失われていまった際の被害は量り知れません。先月開催された世界遺産委員会において、古都京都の文化財として登録されている構成資産の寺社における油散布や落書き等の一連の事件が議題として取り上げられましたが、これも観光地化による悪循環だと指摘する意見もありました(京都は世界遺産登録以前から国際的な観光地であり、外国人は日本人ほど世界遺産を目的とした旅行はしませんが)。